あのことのお話(2005.08.23追記)

白くて軽いプラスチックの椅子を二つ並べて、きれいな月を眺めながら話をした。
最初は、あのこが「neneco(仮)さんはマメな男とマメじゃない男とどっちが良いですか?」と、あたしについての話をしようと聞いてきた。だけどあたしが「あたしは自分の事があまり好きではないから、あたしの事を絶対的に好きで、それをきちんと表してくれる人でないと不安になってしまうから」と答えると、話はぐんぐんと横に逸れ始めた。
自分に自信がないこと、だから『フラれる』ということが則ち自分を否定されている気がして激しく傷つくこと、お互いの意見に頷けて仕方が無かった。
あのこは言った。「フラれるってあたし的に一番辛いことだと思うんですよ。」世の中にはもっともっと大変で辛い事が沢山ある。それは分かっているけれどもでもあのこの中では今現在それが一番大きくて。フラれて(別れて)からもう2年。でも、まだこの状況が辛くて辛くて堪らない、ってあのこは言う。恋の傷は新しい恋でしか癒えない、って。
あたしはこの何ヵ月間か、あのこを見るとちくちくちくちくして仕方が無かったことを本人に伝えた。
なんでだかわからないけれど前に進めないあたしと、前に進めないと自己暗示をかけてしまっているようなあのこと。誰も起きていない夜中に、白い椅子に座って、畳の上で寝転んで、冷房の切れた部屋に戻って、すっかり炭酸の抜けたアルコールを片手に。傷を舐めあうわけでもなく、ただその傷を確認するかのような会話を繰り返した。